「私、先生の事が大好きです…」
 「じゃあ、いまから20分くらいで次のプリント配るので、それまでやってください」
 
 言って、先生は教壇の隣の椅子に座る。
 うわぁ…すっごい前の席座ったから、すっごい近い。
 じーっと私は先生を眺める。
 先生は、手に持っていた本を開こうとしてちら、とこっちを見た。

 (あ、目が、合った!)

 と、思わず私は目をそらす。
 先生も、こっちを見た。もしかして、私を見たのかな。
 そ、そんなこと、ないよね。ああ、恥ずかしい。
 目が合っちゃった。
 
 しばらくプリントを眺め、ゆっくりと目線を上げる。

 先生は、本に目を落としていた。
 背表紙を見る。
 『ゲーテ詩集6』
 まだあれを読んでるんだ。

 また、ちら、と先生の視線が動く。
 教室を見渡して、また私の方を向く。

 (二度目!)

 また少し視線が合って、すぐそらす。
 だめだ、私恥ずかしすぎて、ずっと見てられない。
 好きな人を見つめるって、こんなにもドキドキするもんなんだ。
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