「私、先生の事が大好きです…」
 「あの、大丈夫?」
 「あ、はい…あの、スイマセン」
 「いや、こっちこそ、急に声かけちゃって、ごめんね」
 「い、いえ…」

 彼を助け起こし、椅子に座らせた私はカバンの中からバンソウコウを探していた。

 「あ、あった、腕だして」
 「え?」
 「ほら、そこ、すりむいてるじゃん」

 彼の右腕に血が滲んでいるのを指差す。

 「あ…」
 「ほら、腕」

 おずおず、と彼は腕を出す。

 「あ、ちょっと待って!」
 「え…」

 私は慌ててティッシュを濡らして来る。

 「ちょっと染みるかも…」
 「う…」

 血をぬぐい、バンソウコウをつけてあげた。

 「はい!これでよし!」
 「あ、ありがとうございます」
 「あ、そういや私、今日この部に…―」

 ガラガラガラ…

 「あ!もう来てたの?」
 
 と、口を開きかけたところで沙雪が部室へとやってきた。

 「沙雪」
 「部長」
 「えーっと…それじゃあ紹介しようか。榊(さかき)君、紹介するね、今日から部員になる相田亜紀さん。私と同じ学年ね。沙雪、彼が部員の榊徹(とおる)君。2年生」

 お互いに紹介をされ、改めておじぎをする。
 
 「よろしくね」
 「あ、…はい。よろしくお願いします」

 榊君は恥ずかしそうに言うと、また音楽を聴きながら窓の外を眺めてた。
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