「私、先生の事が大好きです…」
 「そう。天体観測ってのは、星の声を聞くことなんだよ」
 「星の、声」

 「星も月も、この空にいるんだ。こうやって暗くならないとよく見えないけれど、昼間だって朝だって、この空に確かに存在しているんだよ」
 
 キラキラした目で話す先生。
 星のことを話す先生は、『子どもみたいになる』と沙雪から聞いたことがあった。
 まさにそんな感じ。
 
 「夜空に光る星。昼間の空に静かにたたずむ星。宇宙から見たら、地球だって真っ暗に輝く宇宙空間に浮かぶ青い星、なんだよなぁ…」
 
 
 先生は、空を見上げて嬉しそうに語ってくれる。
 星のこと。星への想い。
 
 もう、すっかり私のことは忘れてそうな気がしなくもないけど、こんなに近くで先生の話を聞いて、こんなに近くで先生の笑顔を見て。
 
 この瞬間だけは、先生は私だけのもののような、そんな気がしていた。
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