「私、先生の事が大好きです…」
 ガラガラ!
 と、私が悩みに悩んでいるところへ急に部室のドアが開いた。

 「ここにいた…って…川田先生まで」

 ドアを開けたのは榊君だった。
 ドアの外に立ち尽くして、私と先生の顔を見比べている。

 「榊、なんだ?」
 
 この、不思議な空気を最初にやぶったのは先生。
 榊君は我に返ったようになって「なにか手伝いしようと思って」と切り出した。

 「じゃあ、相田を手伝ってやってくれ」
 「あ、はい」

 言って先生は立ち上がる。
 え?先生行っちゃうの?

 「じゃあ先生は部長達の方を見てくるから、よろしくな」

 先生の声と共に、ドアがピシャンと閉まる。
 あまりの展開の速さに、私はびっくりして思考が停止中。

 「先輩、これ折ればいいんですか?」

 ぽつり、と響く榊君の声に我に返る。

 「あ、うん。あと、もうちょっとなんだけどね」
 
 なんとか答えて、私も作業を再開する。
 
 告白をしようとしていたんだろうか、私は。
 言えなくって残念なような、言わなくて安心したような…

 とにもかくにも榊君の登場が、色んな意味で絶妙なタイミングだったのは言うまでもない。
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