「私、先生の事が大好きです…」
 私は思わず、そんな先生の後をつけていた。
 先生の向かう先には自転車置き場。
 
 「あ…、先生!」
 
 自転車にまたがり、今にも走り出しそうな姿を見て、私は思わず反射的に呼び止めてしまった。
 
 「ん?…君は、うちの生徒の…」
 
 振り返った先生は、制服を見て笑顔になりつつも、あまり見ない顔に戸惑っているようだった。
 案外、近くでみると、綺麗な顔立ちをしている。私は思わず、ぼーっと見とれる。

 「…あ、えっと3-Aの相田です」
 「あぁ、相田さんか。先生になにか用か?」

 納得したような顔はすぐに不思議そうな表情に変わる。
 
 「あ、えっと、あの…」

 呼び止めておきながら、私自身、一体何がしたかったのかちょっとわからない。

 「授業のことかな…といっても君は俺の授業では見たことないよね」
 「あ、えっと…あ、そう!ゲーテ!ゲーテのことです」

 先生の自転車のカゴの中の本を見て、ようやく思い出す。
 ゲーテを追って思わずついて来たんだった。
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