「私、先生の事が大好きです…」
 「そうかー、相田さんは文系なんだな。それじゃあ先生、あんまり会わないわけだ」
 「はい…科学、あの…苦手っていうか…」

 カラカラ、と先生の押す自転車の音と共に、二人、並んで歩く。
 なんだか、普段は感じない、楽しさとか、心地よさがある。
 なにより、先生と話てると、無性に安心出来るんだ。

  

 「あ…あの、ここが、家です」
 
 しばらく歩いていると、私の想いとは裏腹に、あっという間に家が見えてしまった。
 
 「相田さんちって近いんだな」
 「はい、おかげで朝が楽です」
 「いいなぁ、先生なんていつもぎりぎりだよ」
 
 はは、と笑う先生の顔を見て、私もつられて笑う。
 
 「それじゃ、今日は長々と悪かったね」
 「そんな、先生のせいじゃ、ないです。むしろ…たくさん話せて、楽しかったです」
 「そうだなぁ。先生も楽しかったよ。それじゃあ、明日学校でな」
 「はい…さようなら」

 自転車を押しながら、手を振る先生の後姿が遠ざかる。

 「あ、あの、先生!」

 私はまた、思わず先生を呼び止めていた。
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