暗黙の了解
失恋
目の前が真っ暗になった。
2週間ぶりの彼からのメールは、あまりに簡潔で、何の感情も読み取れなかった。

「別れよう」

たった4文字。
たった4文字の言葉で、こんなにも震えている自分が、何だか酷く情けなかった。
すぐに彼の名前をアドレス帳から探して、ほとんど何も考えずに、ただ無我夢中で
電話をかけた。

「もしもし」彼の声が荒々しかった。それが、余計に私の胸に重くのしかかった。
「泉美だけど…」「分かってる」
私は、罪悪感に似たような、喉の奥が息苦しく、熱くなっていく感じを覚えた。

「さっきのメールの事なんだけど…」途切れ途切れの声だけど、それ以上は出せなかった。出したら一緒に涙も出てきそうだった。
だけど何だか泣いてはいけないような気がして、眼が熱くて、痛かった。

「お前と居てもこっちが一方的に好きなだけみたいだし…」
歯切れの悪い、苛立っている様な声だった。鬱陶しいと思われているのかもしれないと思うと、心臓が壊れるほどの鼓動が体中に響くようだった。
ドクドクと、うるさい位の心臓の音が聞こえる。
「誤解だよ…」倒れそうになりながらも、なんとか言葉をしぼり出した。でも、もう何もいえないのが、自分でも分かっていた。

「誤解って言っても、俺と居ても泉美は全然楽しくなさそうだし…殆ど話さないし…」

もう限界だった。感情が体から抜けていく様な、抜け殻になる感じがした。
携帯電話が手から落ちて、静かな部屋に銃声の如く澄んだ音が響き渡った。
それはちょうど、レストランでフォークを落としたときの音に似ていた。

彼と二人で買った、ハートを半分にしたデザインのストラップに、綺麗な稲妻の様な亀裂が入っていた。



これが、私の初めての失恋でした。
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