夜の街から
耳にざわめきが戻ってきた。
ハッとして思い留まり慌てて喋り出した。
その日のライブが終わり挨拶を交わしながら周りを見渡した。
でもその姿はその日眼に映ることは無かった。
その日から毎日通った。
「最近、毎日いるけど何か有ったのかい?」
と顔見知りのお客様に尋ねられる程その姿を見たくて必死になった。
俺をその“白”で包み込んで欲しくて。
黒く染まった俺を救い出してくれる様な気がして。
葵子が俺じゃない誰かに触れられてる、そう考えるだけで吐き気がもよおされる。
嫉妬で気が狂いそうになる。
そんな真っ暗な行き先を照らしてくれる様な気がして。