夜の街から
あたしにギターを与えてくれた彼を見掛けた公園に始まって、あの日巡った順に公園を堪能した。
懐かしさで胸が一杯になりながら、最後の公園に差し掛かった。
今日は朝から張り切って出てきたけどかなりの距離を越えたから大分陽が傾いていた。
そんな中、壱貴を思い出して久しく会ってないななんて思いながら歩みを進めた。
紅く染まる中で幻を見た気がした。
俺が歩く路の向かい側に一瞬“真っ白な”彼が霞めた。
公園の入り口に立って絶句した。
彼越しに見える彼女の眼(まなこ)が見開かれる。
硬直して動かない俺に向かって彼女が声を挙げる。
「あのね、あたし、あたしき―――……」
「行こうか」