夜の街から
耳許で囁かれたその言葉に素直に従う。
葵子が俺の名を呼び切る迄には既に入り口を後にしていた。
俺を連れ出してくれた彼に感謝しながら涙を堪えた。
蘇る先程の光景。
………――――深く、口づけを交わす彼等。
泣いてはいけないと必死で片手で顔を覆った。
右手はあたしをリードしていた。
引かれることに因って。
ふと周りを見渡すと別の公園だった。
ベンチに座る俺にコーヒーを手渡しながら優しく声を降らせる。
「これからどうしたい?」
「………俺を、ううん。あたしを、拐(さら)って……………」