夜の街から

ゆっくりと手を伸ばし、カップを持ち上げた。

喉仏がごくりとなる。


少し手が振るえているのが分からないように必死に抑える。


そこへ、すっと手が伸びてきたかと思うと同時にカップを奪い取られた。


「マスター、紅茶を一つ。」

訳が分からなくて顔を上げた。

その先の表情は苦笑いで、


「ゴメン、コーヒー飲めなかったんだね。」

謝られた。


「紅茶は飲めるでしょ?」


首を縦に振る。
するとその人は微笑んで俺の手を握った。


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