夜の街から

「綺麗だよ――…」

再び繋がれた手が深く近付く。
くっ付いて終いそうな程に。

そして、あたしは射るような強い視線を受けていた。


「人を好きに為ることは、決してダメな事じゃない。寧ろ素晴らしい事だと思う。」

反対の手が伸びてきて、涙で紅く腫れているで有ろう頬に触れる。
まるで今にも壊れそうなガラスを扱うように。


「相手がただ同性であった、と言うだけで恥ずべき事じゃない。人間性に惹かれたんだよ。その子はきっと、貴女が貴方には備わって無いと思ってる何かを持っていた。」


繋いでいた手を、涙を拭っていた手を、放してその人は自分の膝の上に戻した。


「人間は不完全なイキモノだ。だから、自らに無いものを求める。他人が、惹かれ逢うのは当然なんだよ。男と女が廻り逢うのは異性が自らに無い、魅力的なモノを備えているから。」


下ろしていた手を遠慮がちに俺に近付ける。


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