夜の街から
「こうして僕が貴女を想い、追い掛けて仕舞うのも巡り合わせ。」

一瞬、触れるその人の冷たい手のひら。


「女の子に戻ってご覧。もう大丈夫だから。僕が受け止めてあげるから。心は自由だよ……」

言い切る前に、頭が引き寄せられて髪を掻き挙げられる。

ヒヤリと冷たくて柔らかい感触。


――――…ああ、この人は大丈夫だ……
あたしを包み込んでくれる。




その後の記憶は曖昧だった。

確か、手を牽かれてそこを出て。
家まで送ってくれた。

後ろ髪を引かれる様に去っていった。
きっと、また直ぐ会えるからって言い残して……‥‥・・


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