夜の街から
歳は二十歳過ぎだろう。
スーツを着ていてもうっすら分かる程に程好く筋肉が付いていて。
その表情に、1ヶ月前の優しさが垣間見得る(かいまみえる)ことは無かった。
「それでは私達は向こうへ参りましょうか。若い者同士、話題が合うでしょうから。」
「そうですね。それではまた後でね、慶華。」
そう言い残して彼等は座敷から出ていった。
―――…今日の見合いの相手は、ウチの会社に次ぐ大きな会社の御曹司。
この結婚が成立すれば、業界トップは間違いなく父さんになる。
更に多方面に進出出来るように成るだろう。
そんな相手。
歳はあたしのが下だけど、あたしに選ぶ権利は在る。
でも、そんなこと言ってられない様な、恐ろしい雰囲気を醸し出していた。
口を訊けない程に。
母さんと彼の父親らしき人が出ていってからどのくらい経っただろうか。
見当も付かない。
ただただ、背中を冷たい汗が伝って喉仏を鳴らすしか出来なかった。