夜の街から

「ゲーム?」

「そう、ゲーム。賭け事だよ。」

あたしは賭け事は嫌いじゃない。
寧ろ得意だと思う。


勢いで頷きそうになって、慌てて止めた。
内容が分からなかったら、賭けるものが分からなかったらゲームは始められない。


「どんな?」

敵は頷いて、説明し出した。



―――――……‥‥・・



要約すると、“恋愛”ゲームだった。
ルールは簡単。
あたしが彼に落ちれば負け。
あたしは彼のモノと為る。
逆に落ちなかった場合、あたしの勝ちでウチの会社に有利な技術提供をすると云う。


でも、卑怯だ、
彼は。

端から結末なんて目に見えている。
私の‘負け’。


だって、あたしだって一目惚れだったのだから。

負けると分かってても、このゲームを受けてしまった。
期待して。


この1ヶ月、彼が気になって仕方無かった。
逢えることを期待して、身体がウズウズしていた。

葵子の事はまだまだ忘れられそうに無いけれど、傾いてるのは事実。

今更無かった、なんて出来ない。



< 164 / 227 >

この作品をシェア

pagetop