夜の街から
運転席から腕が伸びてきて一瞬のうちにあたしは掴まった。
「迎えに来た。乗って。」
素直に従う。
此処で抵抗しても何の意味も持たない。
相手は知らない相手では無いし、多分母さんの了承を得ている筈だから。
今日いつもの車が来ないのはこう言うこと。
その人の姿が目に入った瞬間理解した。
昨日、料亭で会った人はカチッとしたスーツ姿では無くてラフな服装をしていた。
そう、あたしとゲームをしてる人。
あたしの好敵手(らいばる)。
負けたくない、そう思いながらも心臓は素直で。
嬉しくてつい、心拍数が上がってしまった。
―――…早ク負ケヲ認メテシマエ。
ソウスレバオ前ハ奴ノものデ、奴ハオ前ノものダ。
―――…イヤ、ダメダ。
コノプライドニ懸ケテ負ケテハ為ラナイ。
賭ケ事ハ勝タナケレバ意味ハ無イ。
理性と本能があたしを攻め立てる。
身体はその人を求めている。
きっといづれあたしは本能に屈するだろう。
でも、そう簡単に負けてやるものか。