夜の街から
突然、呼び止められ振り向く。
「慶華、様でございますね。」
有無を言わせぬ雰囲気。
40過ぎ、と言った処だろうか。
所々生えている白髪が更に歳を刻んで居るように見せる。
それだけに、スーツをしっかりと着こなし、威厳まで漂ってる。
「そうですけど。何でしょう?」
「蓮様の事にございます。少々お時間よろしいでしようか。」
葵子はあたしのスカートを少し引っ張り、不安げに「大丈夫?」と尋ねて来る。
あたしはそれに笑顔で「ん。大丈夫だから。」答える。
続けて「申し訳ないけど、1人で帰ってもらえないかな?」言い、有無を言わさず彼女を駅の方へ送り出す。
「で?名乗らないのはとっても失礼じゃなくて?」
「そうですね。大変失礼致しました。わたくし、蓮様の秘書をしております凌駕、と申します。ここでは何ですので場所を変えませんか?」
あたしは頷き車に乗る。