夜の街から
「俺が、今どんな気持ちか分かる?」
あたしはその人じゃあ無いから、分かんない。
分かる訳がない。
黙って首を振る。
「当たり前だよね。だから、言葉で伝えようとする。違う?」
確かにその通り。
たくさん、たくさんあたしにその人の気持ちが伝わっているのは、言葉で表現してくれたから。
それに態度や視線が+αで加わって、よりいっそう気持ちが分かった。
コクン、と頷くあたしを見て彼は続ける。
「でも、貴女は伝えてはくれない。何を考え、何を想っているのか。」
伝えられたら、いいのに。
そうすれば、楽に為れる。
「俺は理由も聞かずに離れられるほど、出来た男じゃない。だから、訊きに来た。教えて欲しいんだよ。」