夜の街から
あたしは観念して、おもむろに口を開いた。


「この前、葵子に気持ち伝えた帰りに、」

痛いほどの視線の圧力に声が、小さくなる。


「突然来て、もう付きまとわないで欲しいって言われて、」

あの光景を思い出す。


「あたしじゃ、ダメって…。れ、蓮の為にはならないって…、」

最後はボソボソとしか、言えなかった。

顔をあげられない。


動く気配がしたな、と思ったら急に抱き締められた。
突然すぎて声も出ない。
でも、心地好い腕のなか。
もっと温もりを求めてしまう。

この腕の中に、ずっといたいって。


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