夜の街から
迷いながらも、頷こうとしたときに。
ノック音が響く。
「お嬢様、夕食の用意が調いました。蓮様もご一緒にどうぞ。」
入ってきたのはユウちゃんだった。
「さあ、お嬢様。旦那様にご報告がお有りになるのでしょう?今、お着替え、ご用意致しますね。」
そう言ってクローゼットに近付く。
あたしの横に服を奥と、蓮をドアへと促した。
「お嬢様がお着替えになられます。外に、別の者が居りますゆえ付いていらして下さい。」
ゆっくりと歩くなかで、二人が、
「お嬢様の操はわたくしがお守りします。簡単に、手を出されぬよう。」
「慶華はもう、僕のフィアンセですが何か?」
「結婚式が終わるまでは指一本触れさせませぬ。」
「それはあんまりじゃないですか。僕にだって事情があります。」
「あと一年程の我慢にございます。辛抱なさいませ。」
と、低い声で攻防していることなど全く知らず、報せられる事も以後なかった。