夜の街から

「慶華はギターも弾けるんだよ。ほら。」

そう言ってギターを手渡してきた。


指に馴染む長らく触れてなかった感触。
一度鳴らせば、指が止まらなくなった。
次々と思い出すあたしの曲達。


何曲か歌い終えると、凄くすっきりした気分になった。


「また、あの頃のようにストリートライブしてみたらどうだい?」


嬉しい一言だった。
だって、ずっとずっと、辞めた時から願ってた事だから。



「そうしてみようかな。」

「えー!お母さんストリートライブなんてやってたの?うそ~。信じられないよ。」

「本当だよ。一度だけCD出したこともあるんだよ。」

「マジで?母さんがCDとか…あり得ないって。」

「ヒドい言いようね。ちゃんとCD有るわよ。今度出してきてあげるわ。」


久しぶりに家族がひとつになった気がした。


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