夜の街から

未だに名前を聞いてこない壱貴に疑問を持ちながら、初めて封じ込めていた気持ちの蓋を少しだけ開いた。


「確かにあたしは高校生だよ。でも学校行ってない。」

「何故?」

「行きたくないから。」

「答えになってないしいー。」

答えたくないから濁してるのに。

ヤツは再び訊いてくる。


「どうして?」

それにあたしは質問で返す。

「どうしてそこまでして知りたい?」

「それは俺が先生だからだよおー。やっぱり先生ってのは生徒の身になって一緒に悩むべきだから?」

「………」

「これが俺の先生の理想像ッッ!」

理想像押し付けられても。
困った顔をしてたらしいあたしに、


「まあ、気が向いたら話してよお。」

軽い調子でそう言って授業が再開された。

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