夜の街から

壱貴は家に着くと鍵を開けてあたしを中に入れた。
部屋はきちんと整頓されて、モノクロに統一されていた。


「昨日掃除しといてよかったよおー。」

そう言いながら、ギターを置く。
ずっと握っていた手をどちらからともなく緩め、離した。
あたしはなんだか手を握っていたのが恥ずかしくなって来て俯いてしまった。


「コーヒー?それとも紅茶?」

「紅茶。」

壱貴の行動はどことなく優しさを含んでいるように感じた。

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