夜の街から
あたしはほんの1、2回しか壱貴の前で歌ったことは無い。
しかもかるく口ずさむ程度。
上手いか下手かも分からないのにいきなりライブだなんて。
あたしはもともと誰かに聞かせる為にギターを始めた訳じゃない。
だから断った。
「せっかく、俺がギター教えてやったんだから披露しなくちゃ全く意味がない。」
なかなかしつこい。
諦めてくれそうな気配は微塵もなかった。
言い争うのにも疲れて、あたしは折れてしまった。