夜の街から
生暖かい、ナニカが頬を伝わった。
思わず頬に手を遣る。
……―――あたし、泣いてる…
「俺、なんかした?!」
慌て始める稀癒にあたしはただ笑って、片付けを再開した。
多分、安心したんだ。
あたしの心は。
消息が分からず、生きているかも掴めなくて不安だった。
いつも淋しそうな雰囲気だった稀癒。
SOSを出しながらも口にしようとせずに強がってた稀癒。
今、あたしの目の前にいる彼は淋しそうでも助けて欲しそうでも無い。
一人で立って歩いてる。
それが分かっただけでも十分だった。