ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
#02 モヒートの記憶
―――――――――
付き合って9ヶ月。
エリは見事、美容師の国家資格を取った。
その資格のために、エリの店のオーナーの淳子さんから猛特訓を受け、猛練習、猛勉強に励んでいた。
俺も何度か練習台になり、試験前の俺の髪は、いい感じにかなり短くなっていたっけ。
合格発表の日。
半休とって、まっ昼間っから仙台駅前のホテルで祝杯。
エリは嬉しくて、ずっと興奮してたな。
そんな笑顔がたまらなくて、淳子さん主催のエリの合格祝賀会の19時まで、何度も愛し合った。
そうだよな………。
美容師の夢が叶ったんだもんな。
腕一本で仕事していく“職人”―――。
あの頃のエリが羨ましかった。
俺には仕事に関して、何の資格もない。
せいぜい会議所に入ってから、日商の簿記三級取ったくらい。
当時は会議所にいて、与えられた事をこなしているのが精一杯だった。
それでも、それなりに忙しい日々過ごしていた自分。
しかし。
エリの合格で、腕一本で出来る仕事を持っていなかった自分が急に恥ずかしくなった。