ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「―――――――水嶋」
「……ん……はい」
口に含んでいたモヒートを、急いで喉に流し込む。
「私と出会ったのは、いつ頃でしたっけ?」
急には思い出せなかった。
何せ頭ん中は、エリとのズレが生じた原因解明に全力を注いでいたから。
「…………ん~と~」
「あ~急にスミマセン。衣理ちゃんの事で頭一杯になっていたのに、こんなこと」
「いや、大丈夫ッスよ」
シゲさんはいつも話し方が丁寧だ。
部下の俺に対して、余程でない限り命令口調でなんか言わない。
俺なんか馴れ馴れしく“シゲさん”とか呼んだり(勿論仕事では言わないが)して。
つい、人がいいことを理由に、甘えてしまう。
「シゲさんと会ったのは……4、5年前のエキスパート派遣の時でしたよ、確か」