ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「衣理さん」

「………はい」

おばーさまが、品のある笑顔でアタシを呼んだ。


「真一は、水嶋家の一人息子で、家族が皆、真一に跡を継いで欲しい気持ちはあるの」

「………はい」

「ただ、茶道なさってる女性じゃなくてはいけないことはないの。………私たちも今更ながら、水嶋家にとって待望の男の子だったばかりに、甘やかせて育ててしまったものだから、まだ彼は子供同然」

「………うっさいな~」

シンが顔を赤く染めながらボソッと言う。
照れたご様子。

「衣理さん………あなたが真一を愛しているのであれば、そして二人が真剣に結婚を考えているのであれば、あたくしは、衣理さんに真一をお願いしたいと思っていますの。真宗さんは如何かしら?」

おばーさまの話の後すぐ、皆が一斉におとーさんに注目した。

おとーさんは、ゆっくり立ち上がり、坪庭の方を見つめていた。

「……………」

沈黙が、水の流れる音と共に過ぎてゆく。
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