ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「……………」

シンがポケットから、ハンカチを出し、アタシの目頭をそっと拭う。

「アリガト…」

「釣り合わないって何だよ?………親父の言うことなんか、気にしなくていいんだから。素直に“イエス”から言えるヤツじゃねぇんだから………」

ムキになってきたのか、シンの声が、大きく荒げはじめた。

「おとーさんのコトだけじゃなくて………ヒック……ヒック……自分でも、よく解らない………」

涙がしまいにはヒックヒックと、嗚咽に変わってきた自分。

帰りたい………。

こんな気分じゃ………一緒にいられないよ………。


「俺の家に………不満か?」

「そうじゃないって!そうじゃないの………不満トカじゃなくて………」

「じゃあ………何だよ………」

敷居の高さや、質の違いゃ、知人の多さや………。
確かに、おとーさんにあんなこと言われて悔しいケド、それ以前に、おかーさんやおばーさまは優しい。

シンを心の底からスキ。

でも、将来を考えたトキ。

アタシには、荷が重い………。

そう、感じたの。


でも、言えなかった―――――。

涙だけが、言葉の代わりに零れるだけだった。

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