ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
あ。

さっき話してたら思い出した。

俺は、徐(おもむ)ろに胸ポケットからケータイを出した。

俺のケータイは、本革風のスキン。
色は黒。
真っ黒……ではない。
マッドタイプの黒。
シックで、質感も触り心地もよくて、ボタンは小さいからメールはしづらいけど、見た目の良さが気に入って、つい何週間か前に機種変したばかり。

――――“一目惚れ”、とでもいうのだろうか。

前のケータイは、5年使っていたせいか、充電池がイカレた。

丁度機種変しようとした時、今のケータイが発売になり、すぐ替えた。

俺の好みは、まず見た目。

ケータイだけじゃない、服も、クルマも、時計も、女もそう、だった。
エリに会うまでは。

でも、エリと別れた今となっては、全てが過去形。

そして、ふと思い出して、今探しているのは、その過去形のカケラ―――。
< 243 / 755 >

この作品をシェア

pagetop