ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
“琥珀色の想い”の梅の香で、ハッと我に返る。
ふと、シゲさんを見ると、俺を誘ってくれたあの時と同じ瞳で俺を見ていた。
「―――――結果、養成過程は補欠でしたが、合格者で辞退する人がいなくて入学できずにいましたが、診断士試験の一次に見事合格。頑張った甲斐があった訳です」
俺のグラスに、シゲさんのグラスを軽く当て、音を鳴らした。
「一次の合格発表から、ひと月ぐらい経ってからでしょうかね。私と再び会ったのは………」
「ああ、そうです。二次試験が終わってからなんで………。あん時は、仙台に来てたシゲさんを、俺から誘って………」
「定禅寺通のけやき並木が、黄色へと衣替えして………って時でしたね。いつ見てもあのけやき並木は画(え)になりますね」
「シゲさんに会うあん時まで、俺………仕事まともに手につかなくて。二次試験もちゃんと解いたか憶えていなくて………」
確かに、定禅寺通のけやき並木は俺も歩いてて、車で走っていて心地よい。
お気に入りのスポットの一つ。
しかし、そのけやき並木の黄色を忘れるくらい、俺は精神的に余裕がなかった。
シゲさんから視界を反らし、グラスの中の琥珀色を見詰めた。