ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
仙台駅─────
そこは久し振りに見る雪景色。
そーいや、通路挟んだ隣のカップルが“昨夜から仙台、雪が凄かったみたいだよ”って言ってたな。
まだ完全に外に出ていないからよく見えないが、結構積もったようだ。
東京と違って、寒さも身に沁みる………これぞ東北の冬。
「………あたし、東京から北へは初めて。それにしても寒いのね」
そう言って、ワインレッドのマフラーを口元まで覆う。
そうなんだ………茉莉子、仙台というか、東北は初めてなんだ………。
茉莉子の事、殆ど知らなかったから(訊いても答えてくれない)、些細な事でも、何だか新鮮な感じだった。
――――着いたものの、まだ14時。
光のページェントまでまだ時間があるので、茉莉子のページェントともう一つリクエストのあった、俺の生まれ育った七ヶ浜町へ。
七ヶ浜町は、東北地方の市町村の中で、面積が最も小さい町。
元々は半島状になっていた町だったが、貞山(ていざん)運河が出来たため、現在は島状になっている。
案内したところは、日本三景の一つでもある松島と大高森が一望できる“多聞山(たもんざん)展望広場”と“毘沙門堂”。
小高い場所に位置しているから風も半端なく冷たい。いや、痛い。
刺すように痛かった。
だが、毘沙門堂の裏側から眺める壮観な雪景色の松島の見た瞬間、寒さを忘れ、言葉を失った。
互いの白い吐息だけが、ふわふわと宙を舞う。
「ノブは、こんなにも素敵な町で生まれ育ったんだね………。村越敦裕を作ったこの町、景色、人々に感謝したい………」