ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
衣理に逢ったら、ちゃんと謝ろう―――――
赦(ゆる)してもらえないかもしれない。
でも、自分なりに精一杯、あの時の事を謝ろう。
仙台駅へ向かう電車の窓から、夕闇のブルーにすっぽりと包まれた空を見ながらぼんやり。
俺はそんなことを考えていた。
茉莉子はと言うと、開閉ドアの脇にある縦のバーを握り締め、流れゆく景色を見詰めている。
窓に映る彼女の横顔は、ミステリアスな憂いを含ませている。
謎だ………。
未だに“茉莉子”という名前と、ケータイの番号だけしか、知らない。
いや、知ることを許されない。
彼女から自分の事を言ってくることも、ない。
彼女から言い渡された三箇条。
1“茉莉子の事を、誰にも言わない”
2“茉莉子の素性を、知ろうとしない”
3“茉莉子を、好きになったりしない”
忠犬ハチ公の様に、何故かこの約束を守っている。
いつもの俺なら悉(ことごと)く破っているのに。
守っている理由は自分でも解っている。
きっと、破ってしまったら、俺は……………。
混み合う車内。
頭の上の方では、仙台駅に着く連絡アナウンスが流れる。
―――――今夜………。
俺は、一つの覚悟を決めていた。