ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「―――――す………すご……い………」
勾当台公園駅地下鉄公園2出口の階段を昇り切ったそこには、オレンジ色に埋め尽くされた空―――――。
空を仰ぐ茉莉子。
感嘆の声は、吐息にも似た声。
「すげ………」
何回も見ているのに、俺も思わず声を漏らす。
いつ見ても、この光のページェントは、幻のよう。
東京や横浜の夜景、イルミネーションを見てきたけど、この仙台の光のページェントは、俺の中でダントツ。
見ていると、自然と笑顔になれる。
この光には、素の自分に戻れる、マジックを持っている気がする。
何言っちゃってんだか、俺(照)。
それにしても、17時半の点灯が始まってまだ間もないのに、人・人・人。
ものすげぇ人の波。
定禅寺通の遊歩道の両脇を平行している国道も、光のトンネル見たさに渋滞の嵐。
県警や警備員が整理にあたっているも、一向に渋滞が緩和されない。
そりゃそうだよな。
この世のものとは思えない、光の星空を散りばめられたら、誰だってゆっくり幸せな気分に浸りたいもの。
沿道の建造物は、この光のページェントを意識し、ハーフミラーが使われている。
そのため、四列あるケヤキに点けられた光のリーフが反射し、輝きと広がりを魅せている。
「…………テレビや雑誌では見ていたけど………本当にスゴい………。星が燃えているみたい………」
彼女の瞳には、オレンジ色に輝く無数の光―――――。
茉莉子
どんな思いで見詰めている?
誰かを想って見詰めている?
光のページェントを見ている相手が俺でいいのか?
クラクションや音響装置付信号機の声、雑踏。
そして。
オレンジのシャワーが、俺の胸に鋭く、射す。