ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
少しの沈黙の後、ノブからこう切り出された。
「………あ…そういや、水嶋さん…だっけか?衣理の彼氏。………俺が言うのも何だけど、元気にしてるの?」
シンのコト、全然知らないワケじゃないもんね。
「………ん。元気だと思う………。最近、月に一回、アタシが働いている美容室に髪切りに来るぐらいで…あんまり会えなくて………」
「え?衣理、美容師なの?夢が叶ったんだ!!よかったじゃん!!」
アタシはこくんと肯いた。
………あ、そう言えば話してなかったんだっけ。
ノブと付き合っていたトキから話してたからな…。美容師になるコト。
そっか…話してなかったんだ、アタシ。
視線をノブから反らし、何処を見るというワケでもなく、ガラス戸の方へと移した。
「どうした?………うまくいってんじゃないのか?」
「………実は…アタシね………彼に―――――」
「―――――あ、衣理、ちょっとゴメンっ!!」
シンは、急いで席を退ち、スタハ外の通路へ出た。
「もしもし?…………はい、あ………お疲れ様です」
………学校からかな?
会話が雑踏や雑談に混じって微かに聞こえてきた。
「………今、仙台駅に………はい……はい、わかりました………」
あっと言う間に会話は終了。
ノブは、左手にケータイ握り締めたまま“はぁ~っ”と、溜息つきながら、席に戻ってきた。