ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「………あ…そういや、水嶋さん…だっけ?衣理の彼氏。………俺が言うのも何だけど、元気にしてるの?」
咄嗟に話題を変えてみたものの、この話を振って良かったのかと少し後悔。
直後、衣理の表情が曇る。
続いているとは言ってたが………。
「………ん。元気だと思う………。最近、月に一回、アタシが働いている美容室に髪切りに来るぐらいで…あんまり会えなくて………」
「え?衣理、美容師なの?」
その言葉に、衣理はコクンと首を縦に振った。
彼女の視線が、ガラス戸の方へとゆっくり移っていく。
遠くを見詰めるブラウンの瞳は、どこか虚ろで切ない。
「どうした?………うまくいってんじゃないのか?」
「………実は…アタシね………彼に―――――」
「―――――あ、衣理、ちょっとゴメンっ!!」
衣理の会話を割るように、後ろのポケットに入れてたケータイが2秒おきに振動する。
俺は、席を退ち、スタハ外の通路へ出る。
「もしもし?…………はい、あ………お疲れ様です」
電話は、学年主任の高田先生からだった。
私服補導を切り上げて、今夜19時からの反省会へ参加しろとの誘いだった。
「………今、仙台駅に………はい……はい、わかりました………」
業務連絡だけだから、ものの一分話したか話さないか位で、終了。
はぁ~っ。
俺、新任だし、一年の副担だし、学年主任直々の電話だし。
ココは断れないっちゃね。
………衣理の話が気になるところだけど、電車の時間ねぇし………。
ひとまず、左手にケータイ握り締め、席に戻る。