ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「………ここのオーナーとあたし、同級生でね。よくダンナとか友達と来るのよ。稲葉くんは、ココのキッチンを任されてるんだけど、結構イケメンよねぇ…」
GAULTIERのミニボストンからタバコを取り出しながら、アタシの耳元で囁くように話す淳子さん。
その後、稲葉さんのヘアーを淳子さんの娘であるいずみさんが担当してるコトを教えてくれた。
思わず稲葉さんに背を向けて座ってたアタシは、彼の方を振り返り、まじまじとヘアースタイルを凝視。
いずみさん………やっぱ上手いなぁ………。
しかもカッコイイし………。
「………あのぉ……そんなに見詰められるとオレ、穴空きそうなんスけど」
「あっ!す…スミマセンっ!!つい……」
ギャーッ!
しまった!つい………見とれてしまった。
眉毛をハの字にさせ困り顔の稲葉さんが逆にアタシを見詰めてた。
「衣理ちゃん、顔真っ赤っか!………稲葉くんゴメンねぇ~。彼女、イマドキ珍しく勉強熱心なコでね…。多分、いずみがスタイリングした稲葉くんの“ヘアスタイル”見てたのよ」
「なんだ………オレの顔に見とれてたんじゃなかったんすかぁ…残念だなぁ」
ケタケタ笑いながら、カウンター下に消えていった。
パタンと開閉する音が冷蔵庫っぽいけど…あるのかな?