ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「ゴホッゴホッ……」
「お冷や飲んだらラクになるかな?」
突然、淳子さんから核心突かれ、思わず咽せるアタシに稲葉さんが透かさず水を差し出してくれた。
グラスの半分程に注がれた水をゆっくり飲み干す。
冷たすぎない、だからと言って温すぎない。
喉にやさしい適温で。
飲みながらも、丁寧な仕事してるお店なんだな…と思わず感心。
「はぁ~っ………スミマセンデシタ」
一呼吸し、飲み干したグラスを、テーブルにコトンと置いた。
「ゴメンね衣理ちゃん。咽せさせるつもりはなかったんだけど……」
「いえ、ダイジョウブです………」
水で気持ちが解れたものの、淳子さんの声で緊張感が再び戻る。
「衣理ちゃん、最近ミス多いし、呼ばれても上の空だし、何より元気ないし………。あたしやスタッフもそうだけど、何よりお客様が心配してたわよ」
えっ?お客様まで?
………どんだけアタシは人に迷惑かけてたんだろ………バカバカバカーッ!!
「―――――最近ぼんやりして、ご迷惑おかけして本当にスミマセンでしたっ!!」
立ち上がり、深々と淳子さんに頭を下げた。
10秒?20秒………30秒?
淳子さんが次のコトバを告げるまでの、“間”が、ものスゴく、長く感じた。