ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「ゴホッゴホッ……」

「お冷や飲んだらラクになるかな?」

突然、淳子さんから核心突かれ、思わず咽せるアタシに稲葉さんが透かさず水を差し出してくれた。

グラスの半分程に注がれた水をゆっくり飲み干す。
冷たすぎない、だからと言って温すぎない。
喉にやさしい適温で。

飲みながらも、丁寧な仕事してるお店なんだな…と思わず感心。


「はぁ~っ………スミマセンデシタ」

一呼吸し、飲み干したグラスを、テーブルにコトンと置いた。


「ゴメンね衣理ちゃん。咽せさせるつもりはなかったんだけど……」

「いえ、ダイジョウブです………」

水で気持ちが解れたものの、淳子さんの声で緊張感が再び戻る。


「衣理ちゃん、最近ミス多いし、呼ばれても上の空だし、何より元気ないし………。あたしやスタッフもそうだけど、何よりお客様が心配してたわよ」

えっ?お客様まで?
………どんだけアタシは人に迷惑かけてたんだろ………バカバカバカーッ!!


「―――――最近ぼんやりして、ご迷惑おかけして本当にスミマセンでしたっ!!」

立ち上がり、深々と淳子さんに頭を下げた。



10秒?20秒………30秒?



淳子さんが次のコトバを告げるまでの、“間”が、ものスゴく、長く感じた。

< 532 / 755 >

この作品をシェア

pagetop