ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
#02 ダーリン
…
シン……
ずっと待ってるんだよ………
今度はいつ会えるの………?
シンにただ、そばにいて欲しいだけなのに―――――
―――――誰もいない、オレンジ色に染まる夕暮れ時の海は、どこか愁(うれ)いがあって、人恋しくなる
アタシは砂浜に佇んで、水平線の遥か向こうを眺めていた
砂に“シン”の文字を書くと、嘲笑うかのように直ぐさま波がその文字を浚(さら)って
何もなかったように、真っ更に消してゆく――――
アタシは涙をボロボロと零しながら、一歩、また一歩と、水平線の彼方へ歩き出す
春の海は冷たくて、とても入れるもんじゃないのに、水に浸かる感覚が全然感じられない
踝(くるぶし)…膝…腿(もも)…腰………胸や腕まで海に入っているのに―――――
何も感じない
アタシ、どうしたんだろう?
まさか、死ぬの?
―――――でも、振り返ると、ついさっきまでいた砂浜はもうなくて
あっ―――――!
足を取られて、海中へ―――――
……………誰か………助けて………!!
声が出ない………
浮力に反して、だんだん、身体が鉛みたいに重くなり、沈んでいく
苦しいよ………
どうして…………
まだ死にたくなんかないってば………
シン………
シンに会いたかったよ―――――
………
……
…