ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
スッ―――――
あれ?シン?
アタシにかけてたヘッドロックを………外し…た?
すると………。
“コホン”と一つ咳ばらい。
淳子さんを真っ正面からジッ…と見詰め………。
「淳子さん………ありがとうございます。必ず、エリを幸せにします」
「シン………」
―――――今度はシンが淳子さんに対し、丁寧に、深く頭を下げた。
まるで、親に“娘さんを下さい!!”と挨拶に来た彼氏のような。
そんなカンジで。
アタシにとって淳子さんは、親も同然の女性(ひと)だけど………。
だから、かな?
だから、“ちゃんと挨拶しなきゃいけない”って、シンなりに考えているの、かな?
そう思うと、胸の奥が、キュン…って苦しくなる。
「その言葉信じてるよ、真ちゃん。衣理ちゃんをお願いね。不幸にしたらあたし、赦(ゆる)さないから………」
「―――――はい」
シンも淳子さんも、お互い動じない。
真っ直ぐな瞳で見詰め合う。
火花見えるくらいに―――――
横から見る、シンの目………。
久しぶりに見る、眼差し。
ドキドキがまだ、止まらない。
坂道を猛スピードで走っているかのように息が上がりそうに。
どんどん、早くなってく………。
シンの瞳(め)を見たから?
それとも、さっきの行為?
久し振りに逢ったトキメキ?
アタシはやっぱり、シンが好きなんだ。
今まで、ひと月逢えなくてモヤモヤしてたのに、逢ったら一瞬で消えてくほどだもの。
恋すると、涙脆(もろ)くなるんだね。
嬉しいのに。
ただ、嬉しいだけなのに。
またボロボロと、透明なビーズみたいな涙が、床に零れ落ちてく―――――