ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「淳子さんには、頭が上がらねぇな、俺たち」


「ホントだね………」


淳子さん………ありがとうございます!!

100万回、“ありがとう”を言っても、全然。寧ろ、物足りないくらい。


この恩は、きっと、アタシが仕事を一生懸命頑張るコトと、アタシとシンが幸せになるコト………なのかな?

それで返すしかないんだと思う。


そう思いながらアタシは、シンの髪を、旋毛(つむじ)の方から毛先に向けて、指先でそ……っと撫でた。


無性に、触れたくなったから。

アタシ、やっぱ髪が好きなんだ。
人の髪に触れると、が落ち着く……………。


「エリ………」


ビクッ!!

思わず、触れた手を離してしまった。
だって、シンの髪に触れた途端、アタシの名前を呼ぶんだもんっ。ビビるよ…。

間髪入れず、今度は離してしまった方の手首をギュッと捕まれた。


「………な…何?」

心臓がドクンっと、一気に跳ね上がった。



「ゴメンな………エリ。俺が甲斐性無しなばっかりに………。プロポーズしたってのに、診断士の資格も取れなければ、大学校への入試も受からなくて………」

アタシの真っ直ぐ見詰めていたが、目を合わせるのが辛くなったのか、シンはベッドの方へ視線を落とす。

「そんなコトないよ………。ほら、毎日忙しい仕事しながら、その合間縫って診断士の勉強してるんだもん………仕方ないよ………」


シンも、ツラいんだよね?


「エリは………この秋からチーフなんだって?」

「………う、うん………。系列は一緒だけど、いずみさん、独立するんだって」

「そっか………。でも、よかったな。淳子さんに認められて」

「ん。ありがと………。アタシの憧れてる女性(ひと)に認められたのはスゴく嬉しい………。その分大変だけど、頑張ってみる。気は抜けないけどね」


「エリは、凄く恵まれた環境にいるんだな………。俺なんて………」


いつものシンと違って、かなりの弱気モード………。

シン、今夜はお酒飲んでないのに………。


「どしたの………?」


伏し目がちなシンの表情。
跳ねた心臓が、落ち着きを取り戻し始めていた。



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