ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
確かに、あのトキの再会からなんだよね………。アタシがタバコ吸うようになったの。
でも、ノブとはそれ以来逢ってない。
アタシのケータイには、“村越敦裕 090-****-****”
彼があの日入れていったケータイ番号が、アドレス帳に入ったまま。
まだ、かけていない。
夜。
タバコ吹かしながら、彼のケータイ番号が表示された画面をぼんやりと眺めるトキがある。
結局電話かけずに、眺めてパタンとケータイを閉じる。
“必要な時に、神様がちゃんと二人を引き合わせくれるから”
閉じたと同時に、茉莉子さんがノブに言ってたっていうコトバを、何故か思い出す。
なんで、思い出すんだろ?
逢ったコトもない女性(ひと)なのに。
この広い夜空の何処かで、茉莉子さんがアタシに囁いていたりして。
「ノブ………元気かな?」
そう、呟(つぶや)いてみたりしながらも、結局。
アタシはノブに電話をかけられずにいた。
だって………。
電話かけてしまったら、ルール違反な気がして。
シンが好き。
大好き。
ワガママなトコも、つい虚勢張るトコも、子供みたいにすぐにムキになるトコも、甘えてくるトコも、全部全部全部。
ずっと、ずっとそばにいて欲しい。
ずっと、ずっとそばにいたい。
なのに。
好きトカ、元サヤになろうトカ、浮気しようってキモチなんて、全然ないのに。
ノブのコトを、時々考えてしまうのは、何故?
……………ノブのコトを考えてしまっている時点でもう、ルール違反犯している?
“必要な時に、神様がちゃんと二人を引き合わせくれるから”
茉莉子さんが引き合わせたかもしれない、あの偶然の再会以来。
アタシとノブの間に、もう、この言葉は成立しないと思っていた………。