ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「そろそろ片付けしながら、今日来たお客様のカルテ入力するかぁ………」


そう呟きながら、バックアップ専用の外付けハードディスクを取りに、スタッフルームへ。

大切な顧客情報が入っているので、耐火金庫の中にいつも入れられてある。

その鍵は、淳子さんとアタシだけが持っていて、暗証番号もこの二人しか(店舗内では)知らないんだ。


店舗奥のスタッフルームへと、足を進める。


ドアをノックして入ろうとしたんだけど。

あ―――――

まだ淳子さんと会議所の石井さんが中にいるんだった。
ここで入ってって、石井さんの前で金庫開けるワケにはいかないよねぇ。
いちおー、部外者なワケだし。


「………後にするかぁ」

踵(きびす)を反(かえ)し、立ち去ろうとした瞬間―――――


「―――――…真ちゃんが?」


聞き慣れた呼び名が、扉の向こう側から耳に留まる。

淳子さんの声だ………。

今、『真ちゃんが?』って言ってたケド、もしかしてシンのコト?

その『真ちゃん』と言うフレーズの先が気になる………。
しかも。
淳子さんの声は驚いていたように思えた。


気になる………。
そして、妙な胸騒ぎ。

アタシは。
ドア越しの二人の会話に、耳を澄ませる。


この場所で聞いてはいけなかったんだと、後悔するコトも知らずに―――――


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