ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
#06 胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ
―――――待ち合わせ場所は、国分町は稲荷小路にある老舗のお寿司屋さん“与太郎壽司”。
新鮮なネタが豊富。
何よりお寿司を塩で食べるという、一風変わったトコ。
去年の暮れに、シンにプロポーズされてから最初に食事した場所―――――
あの時はシンのウニ横取りして。
そしたらシンは仕返しにアタシの貝を食べたら実はサビが効いてて。
大好きなシンにプロポーズされて、何やっても嬉しくて、はしゃいで………。
何でもオープンにしてたシン。
余計なコトまで言って、たまにアタシとか水嶋の家族に叱られてるくらいに、思ったコトを口にしないと気が済まないタイプの彼が………。
どうして会議所辞めるコト黙っていたの?
診断士の資格は?
一次受かったのに、何回も受験して疲れちゃったの?
シン、職場で嫌われてるの………?
訊きたいコト、いっぱいあって………。
感情に走りそうになるキモチを抑え、整理するも、店の扉に手をかけようとした瞬間―――――
アタシの右手を包む、温かく大きな手―――――
「………一緒に入ろっか、エリ」
特徴ある、吃(ども)り気味の声。
少し力がないように聞こえた。
―――――振り向かなくても、アタシには誰だかすぐ解る。
アタシの手を握り締めるその人と、同じタイミングで店へと入って行った。