ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「―――――ゴメン、エリ………診断士の二次試験………ダメだった………」
シンが口を開いたのは、与太郎壽司オススメの“ほろ酔いセット”が全て揃ってからのコト。
箸に手をかけようとしたけど、シン頭を下げる姿とコトバに、アタシはその手を退いて膝に置いた。
「………メール見たから、知ってる。残念…だったね。仕方ないよ。二次試験ってすんごく難しいんでしょ?合格率も低いっていうし…」
ペラペラっと喋っちゃったケド。
ホントは、冷静に出来ない自分がそこにいて。
そーいうトキの自分って“大人じゃないな…”って思っちゃう。
大人の女性だったら、こういう場面でも冷静に言えるんだろうな…って。
アタシ、もう23になるっていうのに、まだまだだな…って瞬間に思えた。
「………ゴメン、ホントに………ゴメン…」
「いいって………ほら、顔上げてよ………」
「………ああ」
「うわーっ、おいしそー♪この“ほろ酔いセット”スゴイねぇ~。あ、今夜は残念会ってコトで―――――」
「エリ」
アタシの声に被さるシンの低い声。
徳利(とっくり)を持とうと中腰になった腰をゆっくり降ろす。
明るく振る舞うのが、わざとらしかったかな?
「俺が今年いっぱいで会議所辞めるって話、知ってるんだろ?」
「……………」
アタシが訊きたかったコトを先に言われ、コトバが出なかった。
「ついさっき、淳子さんから電話もらったよ。具合悪いって早退したんだって?」
「………う、う…ん」
先輩に言っただけで、まだ淳子さんに電話してなかった。
「さっきエリの店に半開き来てったんだってな?………淳子さん、エリが早退したのは、半開きとの会話を聞かれたからじゃないかって……」
「えっ………」
あらためて、淳子さんはスゴイ女性(ひと)なんだなって、思った。
カンが鋭いだけじゃない、淳子さんは、親以上にアタシのコト、解ってる………。
「半開きのヤロー………ムカつく―――――
「“ヘッドハンティング”って………何?」
今度は、アタシがシンのコトバを被った。