ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
シンは、口をそれこそ“半開き”状態でアタシを見詰める。
あんぐり…という言葉が、今のシンの表情にそのまま当て嵌まる。
「……………何でそれを………?………半開きだな?アイツが―――――」
「誰が言ったっていいじゃないっ!!」
「……………」
「答えてよ、シン!!“ヘッドハンティング”ってどういうコト?会議所辞めるコトと関係があるの?診断士への夢は?二次試験落ちたから、もうどうでもいいの?!」
シンを問い詰めていくうちに気持ちが抑えきれなくなっていくを、自分の荒くなった声で気が付く。
「エリ……………ゴメン………」
「……………どうして………?…………一言、言ってくれたってよかったじゃない………。そりゃあ…アタシがどうこう言ったからって、何にもならないけどさ………」
テーブルの上に彩られた“ほろ酔いセット”。
目の前が滲んで………。
ポツポツと、小鉢へと涙の雨を降らせている。
もう、何でアタシって、すぐ泣くの?
いつも、泣かないようにってしているのに。
もう………何でなの?
涙を閉じこめるピアスはもう、アタシの涙はキャパオーバーになっているようだ。
ポロポロと零れ落ちる涙。
いくら塩で味わう老舗の寿司屋さんでも、涙で味つけはしないでしょうに。
「ゴメン……………」
シンは、項垂(うなだ)れて、小さく呟いた。
しばらく、アタシたちの間に不穏な時間が流れていた。
周りのお客さんやお店の人たちはきっと、アタシたちのコトを不思議に思っているだろう。
目の前に並んでいる、しずる感たっぷりの料理に、一切箸もつけず、俯いてただ黙っているだけの男と女がいるんだから………。
「……………エリと灯ろう流しに行く約束をしていた日、尊敬してる診断士の先生に会ったんだ………」
沈黙を破ったのは、シンだった。