ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「………シゲさんは俺が会議所に10年勤めていて、どんなポジションでどんな仕事しているか、俺の性格とかってのも、全て理解した上で、こんな俺を誘ってくれて………そりゃあ迷ったよ。会議所は40歳後半以降に一気に給与が良くなる。フツーに働いていれば、エリや家族との生活も一層ラクになるだろうし…」
「……………」
「あれ?俺が会議所に入ったのは、親父の策略がキッカケだったって、エリに話したっけ………?」
「うん………前に聞いた気がする………」
「大学卒業して東京で就職しようとしていたひとり息子の俺を、仙台に戻そうと必死だったらしい。俺もその頃就職難でもあったし、“いつかは水嶋の家も継がなきゃいけない”から、仕方なくその条件を呑んだ。でも、親父やじいさんのコネとかで入ったこともあって、周囲からの目がいつも気になっててさ………」
「ん………」
「ホントは、イヤではあったんだ………会議所で働くのが。嫌いな仕事ではないし、会議所に就職したおかげで“中小企業診断士”になろうって気持ちにもなれた。ただ………」
「………ただ?」
アタシはバッグからハンカチを取り、涙を拭いながら訊いた。