ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「シゲさんと一緒に仕事して足手纏いになるんだったら、このまま会議所にいた方がいいんじゃないかなって、悩んだんだ………。もう、いい加減周囲の目とか気になる歳じゃねぇし、定年まで会議所で働いて、企業内診断士って人生も悪くないなって………」
「………でも、悩んで悩んで、悩み抜いた末に出した答えが“シゲさんの事務所で働く”ってコト、だったんだね………」
「………ああ………エリに黙っているつもりはなかったんだ………試験が重なっていたのもあったし、時が経つにつれて言い出すキッカケがなくて………。俺、親にも話してなかったから………辞表出した日の夜、親父にこっぴどく怒られたよ………」
「そっか………」
「俺………やっぱ夢捨てられない。会議所にいても資格取ればそのままでもいいけど、もっと自分を別な角度から見詰めたい。もっと、自分のやれる範囲を拡げてみたいんだ………エリ………すまない。また少し診断士の資格を取るのが遅くなるけど………」
「……………」
また沈黙が流れる………。
「………俺には、やっぱりエリが必要だから。シゲさんとの仕事に慣れて、なるべく早く資格取って、迎えに行くから………こんないい加減な俺だけど、ずっとついてきてほしい………」
一旦、アタシの瞳をじっと見て、深々と頭を下げるシン。
“ずっとついてきてほしい”
そう言われると、弱いアタシ。
惚れた、弱み。
「………うん………」
そう呟いて、こくんと頷いた。
その拍子に、一粒の涙が右手の甲に零れ落ちた。