ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「……………で、いつ?ってか、水嶋さん、診断士の資格取ったワケ?」
「あ………それがね………」
まだシンは、中小企業診断士の資格を取っていない。
いないんだけど、シンが………。
――――――三月、シンの誕生日
『えっ?!結納?』
『そ。するぞ、結納。日付は5月5日の祝日。場所は押さえたから。後はエリのキモチと、大友家への挨拶だな』
「ちょ………ちょっと待ってよ………だってシン、まだ診断士の資格取ってないじゃない」
三日月のように細い目
歯並びの良さが際立つ大きい口
いつもの笑顔で微笑む
『俺、7月の大学校養成課程に受かる自信あるし。ダテに一回試験パスしてないって。それに………』
『………それに?』
『結納さえしちゃえば、もうほぼ俺のエリになる訳だし。俺も資格取るのにモチベーション上がる』
『シンは相変わらず強引と言うか…』
『いいだろ?後はエリ、ご両親に話しておいて。近いうちに親父とおふくろ連れて挨拶に行くから』
まったく………アタシの意見もなしに。
去年の“ヘッドハンティング事件”(勝手に名付けた)で頭下げて謝ったコトなんか絶対に忘れてる………。
『シン………』
『ん?』
『シンといると、調子狂う』
『俺は全然。エリがいないとダメだ。エリだって、内心は俺じゃなきゃダメって思ってるんだろ?』
あわわわわ………。
なんつー言いっぷり!
急に自信たっぷりになったり、弱気になったり………。
ジェットコースターみたいなシン。
しかしこのSっぷりは誰に似たのか………。
『早く資格取って、俺の手でエリを幸せにする。エリの夢もすべて俺に預けて欲しい………』
身体がバラバラになるくらい抱きしめられて
胸がキュウウウウウウウンって
心臓が溶けるほどに、愛しいコトバ。
ダメだ、アタシはシンには敵わない………。
自分では難攻不落の砦のつもりでも、彼の前ではけんもほろろ。
アタシは……この………二回目のプロポーズを受け入れるカタチとなった………。