ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「―――――エリと水嶋さん、なんだかんだあるけど、まずは結婚への第一歩だな。おめでと」
「あ………ありがと」
こんなこっぱずかしい話を、ノブにしてよかったのかな?
「いや~腹くっちー。ご馳走様でした、大友さん♪」
あ、やっぱし………。
「つーか、5月5日っつったら、あと二週間じゃね?準備出来てんの?」
「うん…何とか………お父さんもお母さんさんも何か落ち着かなくて。ミネばあちゃんは、仏壇のじいちゃんに語りかける回数が増えた。マイペースなのは弟と妹ぐらいかな?」
「水嶋さんチって、スゴイんだろ?そういうとこにエリが嫁ぐわけだから、家族だって心配になるだろうよ」
ノブには、シンの家のコトを話してあるから話は早い。
政治・教育・経済のスペシャリストの集合体みたいな水嶋家だからなあ………。
しかもシンは、長男でひとり息子。
アタシは結婚すると、自動的にあの豪邸に住むコトになるんだろうな………。
「水嶋家には月に何度か着付けやら茶道習いに行ってるから、同居になっても別に緊張しないだろ?」
アタシが今考えてたコトをどーしてノブが?
ノブって、ホント、怖いくらいスルドイんだよね………。
「ん………でも嫁と姑(あるいは舅)となると別じゃない?」
「やっぱそういうもんなのかな?衣理なら大丈夫だと、俺は思うよ。人あたりいいし」
そぉかな………?
でも、ノブに言われてウレシイよ。
ありがと………。
「そーゆーノブは………結婚トカ、考えてない………の?」
「え………俺?」
沈黙が流れる………。
部屋にある無印良品の目覚まし時計の秒針だけが、時が止まっていないことをかろうじで示していた。